ビジネスの場で相手にアポイントをお願いする際、お時間をいただきたく存じますという言葉をどのように使えばいいか迷うことはありませんか。メールの文面や上司への伝え方など、正しい敬語表現がわからなくて不安に思う方も多いかもしれませんね。以前の私も、言い換えの表現や英語での伝え方、面接や謝罪の場面での適切なマナーについて、深く考えずに使って失敗しそうになった経験があります。この記事では、相手に失礼のない正しい使い方や、状況に合わせた具体的な例文などを詳しく整理してみました。
- ビジネスにおける正しい敬語としての意味と構造
- 相手との距離感に合わせた言い換えや類語のバリエーション
- アポ取りやメール作成における具体的な実践手順
- 面接や謝罪など特別な状況下で気をつけるべきマナー
お時間をいただきたく存じますの正しい意味
まずは、この言葉が本来どのような意味を持っていて、なぜビジネスシーンで頻繁に使われているのか、その基本的な成り立ちから一緒に確認していきましょう。
ビジネス敬語としての使い方
このフレーズは、シンプルに言えば「時間をもらいたい」という気持ちを、複数の敬語を使って最大限に丁寧にした表現です。ビジネスパーソンにとって時間はとても貴重なものなので、それを自分のために割いてもらうには、最上級の配慮と敬意が必要になるんですね。
言葉を分解してみると、名詞の「時間」に丁寧な「お」をつけ、「もらう」の謙譲語である「いただく」、希望の「たい」、そして「思う」の丁重語(謙譲語の一種)である「存じる」に丁寧語の「ます」が組み合わさっています。
二重敬語の誤解について
「いただく」と「存じます」が連続しているため、二重敬語ではないかと心配される方もいますが、これは全く問題ありません。「いただく」は相手からの恩恵に対する謙譲語、「存じる」は自分の思考に対する謙譲語であり、かかっている動詞が違うため、文法的に正しい敬語表現です。
また、「お時間を頂く」と漢字で書くか、「お時間をいただく」とひらがなで書くかで迷うこともあるかと思います。厳密には「時間」を概念的なリソースとして捉えて漢字にするのも間違いではありませんが、現代のビジネス実務では全体の柔らかさを重視して、ひらがなで「いただく」と表記するのが一般的です。
社外の取引先・お客様へのアポイント(フォーマル度:高)
最も敬意を払うべき社外の方に対し、提案や挨拶の機会を設けてもらう際の例文です。「ご多忙のところ恐縮ですが」などのクッション言葉と組み合わせることで、より配慮が伝わります。
- 例文1: 「新規サービスの導入に関するご提案につきまして、ぜひ一度ご説明のお時間をいただきたく存じます。」
- 例文2: 「ご多忙のところ大変恐れ入りますが、本件の進捗報告および今後のスケジュールについて、30分ほどお時間をいただきたく存じます。」
- 例文3: 「近くへお伺いする用件がございますので、ご挨拶も兼ねて少々お時間をいただきたく存じますが、ご都合はいかがでしょうか。」
社内の上司・役員への相談(フォーマル度:中〜高)
社内であっても、役員や他部署の目上の方、あるいは直属の上司に少し長めの相談や報告を行う際に適しています。目的と必要な時間を明確にすることがポイントです。
- 例文1: 「来期の事業計画の件でご相談がございます。今週のどこかで15分ほどお時間をいただきたく存じます。」
- 例文2: 「現在進行中の〇〇プロジェクトにおける課題につきまして、ご意見を伺うためのお時間をいただきたく存じます。」
メール・書面での使用(定型的な依頼)
解説文にもあった通り、現代のビジネス実務に合わせて「いただく」をひらがなで表記し、柔らかさと丁寧さを両立させたメール文面の例です。
- 例文1: 「誠に勝手なお願いで恐縮ですが、弊社担当者より直接ご案内させていただくため、来週の火曜または水曜にお時間をいただきたく存じます。」
- 例文2: 「万全を期して引き継ぎを行いたく、後日改めてオンラインにてお打ち合わせのお時間をいただきたく存じます。」
状況に合わせた言い換えや類語
とても丁寧な表現ではありますが、いつも同じ言葉を使えばいいというわけではありません。相手との関係性や依頼の重さによって、言葉の「丁寧さの階層」を使い分けることが、スムーズなコミュニケーションのコツかなと思います。
| 表現 | 丁寧さのレベル | 主な使用シーンと特徴 |
|---|---|---|
| お時間をいただきたく存じます | 最上級(極めてフォーマル) | 社外の取引先や新規顧客、面識の浅い目上の相手。 |
| お時間をいただけますでしょうか | 丁寧(疑問形・相手主導) | 相手に時間を割く判断を委ねるアプローチ。様子を伺う際に有効。 |
| お願いしたく存じます | 標準的(ビジネス全般) | バランスが良く、幅広く使える表現。 |
| お時間いただけますか | 普通(ややカジュアル) | 日常的に連携している同僚や、親しい上司への気軽な相談。 |
相手に主導権を渡して「断りやすさ」を残したい場合は、末尾を「〜でしょうか」と疑問形にするのがおすすめです。
論理的に破綻しやすい「拝借」の使用に注意
「お時間を拝借したく存じます」という言葉を聞くことがありますが、これは注意が必要です。「拝借」は借りるという意味であり、使用後は返すことが前提となります。時間は一度使ったら返却できないため、違和感を覚える人もいます。「頂戴する」や「いただく」を使うのが無難ですね。
丁寧さのレベル別・言い換え例文集
相手との心理的な距離感や、依頼内容の重さに応じて使い分ける際の参考にしてください。
お時間をいただけますでしょうか(丁寧・疑問形) 相手に「YES / NO」の選択権(主導権)を委ね、柔らかく様子を伺う際に適しています。
- 「新しい企画書の件でご相談があるのですが、今週の金曜日に15分ほどお時間をいただけますでしょうか。」
- 「〇〇社への提案内容について、少しすり合わせのお時間をいただけますでしょうか。」
お願いしたく存じます(標準的・ビジネス全般) 「時間をもらう」という直接的な言葉を避けつつ、打ち合わせや面談の場をしっかりと設けたい時にバランス良く使えます。
- 「次回の定例会議の前に、本件についての事前のお打ち合わせをお願いしたく存じます。」
- 「詳細につきましては、後日改めてご説明の機会をお願いしたく存じます。」
お時間いただけますか(普通・ややカジュアル) 日頃から密にコミュニケーションを取っている社内のメンバーや、直属の上司にサッと確認や相談をしたい時に適しています。
- 「〇〇のデータについて少し確認したいのですが、今お時間いただけますか?」
- 「明日の訪問の件で、5分だけお時間いただけますか?」
要注意:「拝借」の誤用と正しい言い換え
文章にある通り、「拝借=借りる(後で返す)」という前提があるため、返却不可能な「時間」に対して使うのは論理的に矛盾が生じ、相手に違和感を与えてしまうリスクがあります。
- ❌ 誤った使用例(違和感を与える表現) 「ご多忙のところ恐れ入りますが、少々お時間を拝借したく存じます。」
- ⭕ 正しい使用例(「もらう」の謙譲語を使用) 「ご多忙のところ恐れ入りますが、少々お時間を頂戴したく存じます。」 「ご多忙のところ恐れ入りますが、少々お時間をいただきたく存じます。」
上司など目上の人への注意点
「お時間をいただきたく存じます」は極めてフォーマルな言葉なので、日常的に顔を合わせている直属の上司に対して頻繁に使うと、かえってよそよそしくなり、慇懃無礼(丁寧すぎて嫌味に聞こえること)な印象を与えてしまうリスクがあります。
普段からよく話す上司にちょっとした相談をするなら、「ご相談があるのですが、10分ほどお時間いただけますでしょうか」くらいの方が、心理的距離が近くて自然です。一方で、役員クラスの方や、社内の別部署の目上の方に改まった依頼をする際には、「お時間を頂戴できると幸いに存じます」といった、柔らかくも格式高い表現を選ぶと良い関係が築けるはずです。
言葉の選び方一つで相手が受ける印象は大きく変わるので、相手との普段の距離感を意識して調整してみてください。
直属の上司・よく話す目上の方への例文(近めの距離感)
日常的な業務の報連相で過剰な敬語を使うと、かえって壁を感じさせてしまいます。「お時間をいただきたく存じます」は避け、相手の負担にならない適度な丁寧さを心がけるのがポイントです。
- 「〇〇の件でご相談があるのですが、本日10分ほどお時間いただけますでしょうか。」
- 「お疲れ様です。明日のプレゼン資料の件で少し確認させていただきたいのですが、午後からお時間よろしいでしょうか。」
- 「急ぎのトラブル対応につきまして、すぐにお伝えしたいことがあり、5分だけお時間いただけますか。」
役員クラス・他部署の目上の方への例文(遠めの距離感)
普段接点のない役員や、他部署の部長クラスなどにアプローチする場合は、最高レベルの敬意と、相手のスケジュールを思いやる柔らかさが求められます。
- 「新規プロジェクトの進捗ご報告につきまして、来週のどこかでお時間を頂戴できると幸いに存じます。」
- 「突然のご連絡で大変恐縮ですが、〇〇システム導入の件でお伺いしたく、お時間を頂戴できますでしょうか。」
- 「もしよろしければ、今後の連携についてご意見を伺うためのお時間を頂戴できますと幸甚に存じます。」
英語のビジネス場面での表現
グローバル化が進む中、英語でメールを送ったりアポイントを取ったりする機会も増えていますよね。英語圏の人たちはストレートに用件を伝えるイメージがあるかもしれませんが、ビジネスの場では相手の時間を尊重する丁寧な表現がしっかり根付いています。
| 日本語のニュアンス | 英語表現の例 |
|---|---|
| 少々お時間を頂きたく存じます | I’d appreciate it if you could give me some time. |
| 少しお時間をいただけますか | May I have a moment of your time? |
| 30分ほどお時間をいただけますか | May I have 30 minutes of your time? |
特に「I would appreciate it if you could…」は、「もし〜していただけたら大変ありがたいです」という仮定法を使った非常に丁寧な表現で、日本的な「相手に選択の余地を残す」アプローチとぴったり合致します。
1. I’d appreciate it if you could give me some time.
(少々お時間を頂きたく存じます) 解説にある通り、仮定法を用いた最も丁寧でへりくだった表現です。クライアントへのメールや、目上の相手への改まった依頼に最適です。
- 例文(メール): “I’d appreciate it if you could give me some time next week to discuss the upcoming project.” (次期プロジェクトについて話し合うため、来週少々お時間を頂きたく存じます。)
- 例文(メール): “Regarding the contract renewal, I would appreciate it if you could give me some time for a brief online meeting.” (契約更新につきまして、簡単なオンラインミーティングのお時間を頂戴できると幸いに存じます。)
2. May I have a moment of your time?
(少しお時間をいただけますか?) “May I ~” は許可を求めるフォーマルな表現です。オフィスで上司に声をかける時や、チャットツールで相手の都合を伺う際の「今、少しよろしいでしょうか?」というニュアンスにぴったり合致します。
- 例文(口頭・チャット): “Excuse me, may I have a moment of your time to review this document?” (失礼いたします、こちらの資料を確認していただくために少しお時間をいただけますか?)
- 例文(口頭・チャット): “I have a quick question about the presentation. May I have a moment of your time?” (プレゼンについて簡単な質問があるのですが、少しお時間をいただけますか?)
3. May I have 30 minutes of your time?
(30分ほどお時間をいただけますか?) 時間を具体的に区切ることで、相手の心理的ハードル(いつまで拘束されるのかわからない不安)を下げる非常に実務的なアプローチです。
- 例文(メール・口頭): “May I have 30 minutes of your time tomorrow afternoon for a quick update?” (簡単な進捗報告のため、明日の午後に30分ほどお時間をいただけますでしょうか?)
- 例文(メール): “I’d like to share the marketing results with you. May I have 15 minutes of your time this Friday?” (マーケティングの結果を共有させていただきたいのですが、今週の金曜日に15分ほどお時間をいただけますか?)
お時間をいただきたく存じますの実践的な場面
ここからは、日々の業務の中で実際にどのように使えばいいのか、アポイントの取得やメール作成、そして特殊なシチュエーションでの実践的な手順を詳しくご紹介しますね。
アポを取る際の具体的な例文
相手の時間をいただく際に一番大切なのは、「何のために」「どれくらいの時間」が必要なのかを明確に伝えることです。ただ「お時間をください」と言うだけでは、相手もスケジュールが立てられず困ってしまいます。
良い例文:
「〇〇プロジェクトの進捗についてご報告したく、明日の午後に15分ほどお時間をいただきたく存じますが、ご都合はいかがでしょうか。」
このように、目的と具体的な所要時間の目安(15分など)をセットにするのが鉄則です。また、「ご多忙のところ恐れ入りますが」といったクッション言葉を前に添えることで、相手の忙しさに配慮している姿勢が伝わり、印象がぐっと良くなります。
電話でアポイントを取る場合
相手の時間をリアルタイムで奪っている状態になるため、冒頭のクッション言葉と簡潔な要件伝達が重要です。
- 例文:「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇の件でご相談があり、明日の午後に10分ほどお時間をいただきたく存じますが、ご都合はいかがでしょうか。」
対面(訪問)のアポイントを取る場合
相手方に場所の確保などを強いることになるため、丁寧さを一段階引き上げ、少し先の予定を伺います。
- 例文:「ご多忙の折に誠に恐縮ですが、新サービスのご案内のため、来週のどこかで30分ほどお時間をいただきたく存じます。」
社内チャットでアポイントを取る場合
社内でのスピーディーなやり取りを想定し、丁寧さを保ちつつ少し柔らかい表現に調整します。
- 例文:「お疲れ様です。〇〇プロジェクトの進捗について直接ご報告したく、本日夕方に15分ほどお時間いただけますでしょうか。」
場面やツールによって最適な言葉の選び方は変わりますが、根底にある「相手のリソース(時間)を尊重する」というルールは共通していますね。
依頼メールの正しい作成手順
メールなどの文字だけのコミュニケーションでは、声のトーンや表情が伝わらないため、言葉選びがダイレクトに印象に直結します。
1. 件名で要件を明示する
まずは件名を見ただけで「誰からの、どんな要件のアポ依頼か」がわかるようにします。
2. クッション言葉と丁寧な依頼
本文の冒頭で挨拶をした後、「ご多忙の中誠に恐縮ですが、〇〇の件でお時間をいただきたく存じます」と丁寧に切り出します。
3. 日程調整の負担を減らす
相手の手間を省くため、結びの言葉として「こちらからお伺いいたしますので、来週中でご都合の良い日時を2〜3ほどお知らせいただけますと幸いです」といった一文を添えましょう。こちらから複数の候補日時を提示するのも非常にスマートなやり方です。
ご提示いただいた「依頼メールの正しい作成手順」の3つのステップを踏まえ、相手の負担を最小限に抑えつつ、丁寧で好印象を与える実践的なメールテンプレートを作成しました。
文字だけのコミュニケーションだからこそ、相手の「読む手間」と「日程を考える手間」を省く工夫がそのまま誠実さとして伝わります。
実践:依頼メールのテンプレート
ご自身の状況に合わせて、[ ]の部分を書き換えてご活用ください。
件名: 【ご相談】〇〇導入に関するお打ち合わせのお願い(株式会社〇〇 [自分の氏名])
本文: [相手の会社名] [相手の部署名] [相手の役職] [相手の氏名] 様
いつも大変お世話になっております。 株式会社〇〇の[自分の氏名]です。
本日は、現在ご検討いただいております〇〇の導入スケジュールにつきまして、直接ご説明とご相談をさせていただきたくご連絡いたしました。
ご多忙の中誠に恐縮ですが、来週あたりで30分ほどお時間をいただきたく存じます。
オンライン(または貴社へのご訪問)にて、こちらからお伺いできればと考えております。 誠に勝手ながら、以下の日程でご都合のよろしい日時はございますでしょうか。
・〇月〇日(〇)10:00~12:00 ・〇月〇日(〇)14:00~17:00 ・〇月〇日(〇)15:00~18:00
もし上記の日程でご都合が合わない場合は、[相手の氏名]様のご都合の良い日時を2〜3ほどお知らせいただけますと幸いです。
お忙しいところ大変お手数をおかけいたしますが、ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
[署名]
テンプレートのポイント
- ステップ1(件名): 「【ご相談】」と隅付き括弧を入れることで、受信トレイの中で用件が視覚的に際立ちます。
- ステップ2(クッション言葉): 「ご多忙の中誠に恐縮ですが」を挟むことで、一方的な要求になるのを防いでいます。
- ステップ3(日程調整の負担軽減): こちらから複数の候補日時を提示しつつ、「合わなければ別の日時でも構わない」という逃げ道(選択肢)を用意することで、相手にプレッシャーを与えないスマートな文面になっています。
面接の日程調整で使える表現
就職活動や転職の面接日程を調整する際にも、この言葉は活躍します。採用担当者は通常業務の合間を縫って面接の時間を確保しているため、時間を割いてもらうことへの感謝と配慮を忘れないようにしたいですね。
注意したい間違った使い方
「お時間をいただきたく〜」は、あくまで相手の意識的な時間を割いてもらうための言葉です。自分が資料を作るための作業時間や、システムの処理待ちの時間に対して、「準備にお時間をいただきたく存じます」と使うのは不適切です。この場合は「ご用意に10分ほどかかりますが、よろしいでしょうか」と事実を伝えるのが正解です。
面接の日程調整で使える例文
採用担当者への配慮を示しつつ、面接の機会を設けてもらう(または確定する)際に適した表現です。
- 日程をこちらから打診する場合: 「この度は、面接の機会を設けていただき誠にありがとうございます。ご多忙のところ恐縮ですが、以下の日程のいずれかにて面接のお時間をいただきたく存じます。」
- 提示された日程から再調整をお願いする場合: 「誠に恐縮ですが、ご提示いただいた日程に外せない予定が入っておりまして、別の日程で面接のお時間をいただきたく存じます。こちらの都合で大変申し訳ございませんが、以下の日程でご検討いただくことは可能でしょうか。」
- 面接日程が確定した際の結びの言葉として: 「〇月〇日〇時より、お伺いいたします。当日は採用担当の〇〇様の貴重なお時間をいただきたく存じますので、何卒よろしくお願い申し上げます。」
注意したい間違った使い方と正しい表現(自分の作業時間)
解説文にもあった通り、「お時間をいただきたく存じます」は「相手の時間を割いてもらう」ための言葉です。自分側の準備やシステム処理の待ち時間に対して使うのは、対象の取り違えとなるため注意が必要です。
以下に、よくある誤用シーンと正しい言い換えをまとめました。
【シーン1】面接や打ち合わせの資料(ポートフォリオなど)を準備する時
- ❌ 誤った表現:「資料の準備に、少々お時間をいただきたく存じます。」
- ⭕ 正しい表現:「資料のご用意に10分ほどかかりますが、よろしいでしょうか。」
- ⭕ 正しい表現:「資料の準備のため、10分ほどお待ちいただけますでしょうか。」
【シーン2】システム処理やデータ抽出などで相手を待たせる時
- ❌ 誤った表現:「ただいまデータの確認にお時間をいただきたく存じます。」
- ⭕ 正しい表現:「データの確認に少々お時間をいただきますが、このままお待ちいただけますでしょうか。」(※補助動詞としての「いただく」であり、へりくだった事実伝達)
ポイント 相手を拘束するわけではない物理的な作業時間に対しては、へりくだりすぎる必要はありません。「〇〇に〇分かかります」という客観的な事実を丁寧に伝え、待ってもらえるかどうかの「許可」をとるスタイルが正解です。
謝罪の場面における適切な対応
トラブルやミスでお詫びをするために訪問する場合は、通常のアポイントメントとは正反対のルールが存在することを覚えておいてください。
謝罪の場面では、相手に不利益をかけてしまっているため、「近日中にお時間を頂戴することはできますでしょうか」と、謝罪の意思を示しつつ時間を懇願する姿勢が必要です。そして最大のポイントは、絶対にこちらから日時を指定しないことです。
「来週の火曜か水曜で〜」と候補を出すのは、「自分の都合で謝りに来るのか」と相手の怒りを増幅させる致命的なマナー違反になりかねません。「いつでもお伺いいたしますので、ご都合のよい日時をご指定ください」と、相手に完全に主導権を委ねるのが正しいアプローチとなります。
ご提示いただいた「謝罪におけるアポイントの正反対のルール」と「絶対にこちらから日時を指定しない」という極めて重要なポイントを踏まえ、相手の感情を逆撫でしないための、徹底して配慮を尽くした謝罪時の例文を作成しました。
謝罪の場面では、相手との間に一時的な「権力勾配(相手が圧倒的に上の立場)」が生じていることを意識し、自己都合を完全に排除した言葉選びが求められます。
謝罪・トラブル対応時のアポイント例文
相手の怒りや不満を増幅させないよう、謝罪の意思を明確にしたうえで、日程の決定権を完全に相手に委ねる表現です。
電話で謝罪のアポイントを取る場合
- 「この度の〇〇の件につきまして、多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。まずは早急にお詫びとお手持ちの状況についてご説明に伺わなければと考えておりますが、近日中にお時間を頂戴することはできますでしょうか。」
- 「〇〇様のご都合を最優先とさせていただきますので、いつでもお伺いいたします。ご都合のよい日時をご指定いただけないでしょうか。」
メールで謝罪のアポイントを取る場合(緊急時や電話がつながらない場合)
- 件名:【お詫び】〇〇納期遅延の件につきまして(株式会社〇〇)
- 本文抜粋: 「本来であれば、今すぐにお伺いして直接お詫びを申し上げるべきところ、メールでの第一報となりましたこと、深くお詫び申し上げます。 本件につきまして、改めて直接お詫びと今後の対応に関するご説明をしたく存じます。 近日中にお時間を頂戴することはできますでしょうか。 弊社といたしましては、いつでもお伺いする所存でございます。誠に恐縮ではございますが、〇〇様のご都合のよい日時をご指定いただけますでしょうか。」
【重要】通常のアポイントと謝罪のアポイントの比較
文章で解説されていた「正反対のルール」を視覚的に整理しました。この違いを誤ると致命的なマナー違反となります。
- 候補日時の提示
- 通常のアポ: ⭕️ こちらから2〜3日提示する(相手の手間を省くため)
- 謝罪のアポ: ❌ 自分の都合を押し付けていると捉えられるため絶対NG
- 日程の決定権
- 通常のアポ: 双方のスケジュールをすり合わせる
- 謝罪のアポ: 相手に「完全な主導権」を委ねる(いつでも伺う姿勢)
- アポイントの目的
- 通常のアポ: 相談、提案、報告など
- 謝罪のアポ: まずは「お詫び」を最優先事項として明示する
謝罪の連絡は非常に緊張を伴いますが、焦って自分から「明日の13時はいかがでしょうか」などと提案してしまわないよう、このルールを念頭に置いておくことがリスク管理に繋がります。
相手から求められた場合の返信
自分がお願いするだけでなく、相手から「お時間をいただきたく存じます」と連絡をもらうこともありますよね。その時の返信の作法も、ビジネスパーソンとしての評価に直結します。
提示された日程で問題ない場合は、「承知いたしました。ご提示いただいた〇月〇日〇時にてよろしくお願いいたします」と日時を復唱して確定させます。「わかりました」の丁寧語である「承知いたしました」は、相手を問わず安全に使えます。
もし再調整が必要な場合は、「大変恐縮ですが、あいにくその日は出張の予定が入っておりまして、以下の日程であればお伺い可能ですがいかがでしょうか」と、理由を添えて代替案を提示することで、やり取りがスムーズに進みます。
提示された日程で承諾する場合の例文
文章にある通り、「承知いたしました」という安全で丁寧な言葉を使い、必ず日時を復唱して認識のズレを防ぐのが鉄則です。
- 例文(メール): 「ご連絡ありがとうございます。ご提示いただいた日程にて承知いたしました。 それでは、〇月〇日(〇)の14:00より、弊社にお越しいただけますと幸いです。当日は何卒よろしくお願いいたします。」
- 例文(社内チャット): 「お疲れ様です。〇〇の件、承知いたしました。 本日16:00より、〇〇会議室にてよろしくお願いいたします。」
日程の再調整をお願いする場合の例文(代替案の提示)
相手の提示した日程が合わない場合、ただ断るだけでなく「簡潔な理由」と「代替案」をセットで返すことで、相手に何度もメールを往復させる手間を省くことができます。
- 例文(メール): 「お打ち合わせの件、ご連絡いただき誠にありがとうございます。 せっかく日程をご提示いただいたところ大変恐縮なのですが、あいにくその日は終日出張の予定が入っておりまして、お受けすることが難しい状況です。 誠に勝手ながら、以下の日程であればお時間をお取りできるのですが、いかがでしょうか。 ・〇月〇日(〇)10:00〜12:00 ・〇月〇日(〇)15:00〜17:00」
- 例文(相手から「都合の良い日を教えてほしい」と言われた場合): 「ご丁寧にご連絡いただきありがとうございます。喜んで機会を設けさせていただきます。 こちらの都合で恐縮ですが、以下の日程でご都合のよろしい日をお知らせいただけますでしょうか。 ・〇月〇日(〇)13:00〜15:00 ・〇月〇日(〇)10:00〜12:00」
スマートな返信のポイント
返信における最大の思いやりは、「コミュニケーションのラリー(往復)を最小限にすること」です。 代替案を提示する際は、「来週のどこかで〜」と曖昧に返すのではなく、必ずピンポイントで日時を複数提示することで、相手は「選ぶだけ」で済むため、非常に仕事がしやすい人だという好印象を与えることができます。
お時間をいただきたく存じますのまとめ
「お時間をいただきたく存じます」という言葉は、単なる定型句ではなく、相手の状況への想像力やビジネスマナーの習熟度を示す大切なフレーズです。文法的に正しい敬語を使うだけでなく、具体的な所要時間を提示したり、クッション言葉を添えたり、謝罪の際には相手に主導権を渡すといった多層的な配慮があって初めて、生きたコミュニケーションになります。
免責事項と専門家へのご相談について
本記事でご紹介したビジネス敬語のルールや所要時間の目安などは、あくまで一般的なビジネスマナーに基づく目安です。業界の慣習や社内の独自のルールが存在する場合は、そちらが優先されることがあります。最終的な表現の判断に迷った際は、社内の先輩やビジネスマナーの専門家にご相談されることをおすすめいたします。
言葉のニュアンスを深く理解し、相手への敬意を込めてお時間をいただきたく存じますという言葉を使うことができれば、きっと相手との間に長期的な信頼関係を築き上げていけるはずです。毎日の業務の中で、少しずつ実践してみてくださいね。
要点まとめ
- 相手の時間を頂戴する際の最上級に丁寧な敬語表現である
- 複数の敬語を組み合わせているが文法的な二重敬語には該当しない
- 現代のビジネス実務ではひらがなでいただくとするのが一般的である
- 直属の上司や親しい同僚に多用するとよそよそしい印象を与えるリスクがある
- 相手との関係性や依頼の重さに応じて適切な言い換え表現を使い分ける
- 末尾を疑問形にすることで相手に判断を委ねる心理的配慮となる
- アポイントの依頼時は必ず具体的な目的と所要時間の目安を提示する
- ご多忙のところ恐縮ですがなどのクッション言葉を前置きとして添える
- メールの場合は相手の手間を省くためにこちらから複数の候補日時を提示する
- トラブルに対する謝罪で訪問する場合は相手に完全な日程の選択権を委ねる
- 自分自身の作業やシステムの処理にかかる物理的な時間を伝えるための使用は誤りである
- 時間は返却できないためお時間を拝借するという表現は論理的に不適切である
- 頂戴するはいただくよりもさらに格式高く強い敬意を示す場面に適している
- 相手からの申し出を承諾する際は確定日時を復唱して認識の齟齬を防ぐ
- 英語圏のビジネス環境でも仮定法などを用いて相手の時間を尊重する表現が存在する
